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ウルトラスーパーざっくり線型代数の歴史

微積分の起源といえば、17世紀のニュートンライプニッツにある。これは有名。すごく有名。もちろんその後の時代の流れとともにその理論は進化を遂げたが、とても顕著なエポックメイキングがこの17世紀にあることは間違いない。
では線型代数の起源とは? どんな歴史を経て、いつ頃完成したのか? 私の通っている教室の先生が線型代数の講義のはじめにその歴史をざっくり語ってくれた。それをメモったものをベースにこの記事を書いてみた。
線型代数のアイデアの起源は、実は古代メソポタミア文明まで遡ってしまう。ここでは連立一次方程式の理論も研究されている。13世紀のフィボナッチの算盤でも、連立一次方程式のアルゴリズムの問題が扱われている。現在の線型代数の教科書は行列の話から入っているものも多いが、行列とは、古代からあるこれらの算術に過ぎない。古代中国にも連立一次方程式の行列による解法がすでにあった。
その後の時代の、フェルマーあたりの解析幾何まで行くと、ここで座標という概念のはじまりである。パラメータtによる幾何表現が生まれた。
フランス革命後のころ、微積分が生まれた。ここで線型微分方程式の解法のなかに、重ね合わせの原理という、線型写像を特徴付ける原理も見て取れる。フーリエ級数の理論にも、重ね合わせの原理やテンソル積の起源とも言えるアイデアが含まれている。他にも、微積分の現象を能率よく表すために、線型写像が導入された。今日の数学でいうところの次元も、もとは数理科学のパラメータが起源といえる。このほか行列式外積多様体など線型代数の基本となる概念が19世紀までに数多く生まれたが、今日の線型代数として体系化されるには至っていない。
20世紀に関数空間が誕生した。実はこれは線型代数より先に出てきたのである。そこからヒルベルト空間やバナッハ空間など無限次元の空間が問題となった。この後、ブルバキによって抽象線型代数がまとめあげられた。線型代数の最先端である作用素環に至る。
つまり線型代数の事始は古代なのだが、体系化されたのは20世紀前半の話である。つまり、古くて新しいものなのだ。なかなか渋い学術分野ではないか。